チセを傷つけられたエリアスが、我を忘れて本性を暴走させます。異形のその姿を目の当たりにしたチセは何を思うのか。
そして、謎の魔術師の正体が判明し、世界をかき乱す男の行動の一端が解ってきます。神話とフェアリーテイルの息づく世界の、神秘のベールが解かれていく第3巻です。
「魔法使いの嫁」3巻のあらすじ
チセを傷つけられたエリアスは、正体を現し、魔術師を攻撃します。チセは助けられた黒妖犬の腕の中で、イザベルという少女に飼われていた黒妖犬の過去を見ます。
目を覚ましたチセは、異形と化したエリアスと、彼が魔術師を「カルタフィルス」と呼ぶのを目撃します。名前を呼ばれた魔術師は激怒しますが、隙をつかれてレンフレッドに頭を撃たれ倒れます。
本性のエリアスをチセは抱きしめ、落ち着きを取り戻したエリアスは、人の体に戻ります。起き上がったカルタフィルスは、作り上げた蜘蛛のようなキメラを見せますが、それは黒妖犬の飼い主の体を使ったものでした。
怒ったチセは魔力で対抗しようとしますが、それは世界の理を曲げる力だとして、エリアスに止められます。
エリアスは墓に住む妖精、ウィル・オー・ウィスプを召喚。事情を知るウィル・オー・ウィスプは黒妖犬に発破をかけます。黒妖犬は、墓守犬の本性に戻り、カルタフィルスと対峙し、チセと黒妖犬は使い魔の結びをして、キメラを倒します。
カルタフィルスはあっさり引き上げ、エリアスとチセ、そして黒妖犬は家に戻りました。
またいつも通りの日常が戻ってきますが、周囲の人間は、チセがエリアスに依存している事に心配をします。チセは母親に殺されかけた過去のトラウマから、エリアスに寄りかかってしまうことを自覚しています。
ある日、エリアスの師匠のリンデルから、チセへ杖を作ると呼び出しがかかります。1人で来いという要請に、チセはエリアスと離れ、使い魔ルツと共にリンデルの元に向かいました。
チセが不在の折、エリアスの元へ学院管理局の人間が訪れ、チセの将来について話があると言われます。また、チセはリンデルに自分のトラウマを告白し、リンデルは魔法使いの成り立ちとエリアスの過去をチセに語り始めるのでした。
「魔法使いの嫁」3巻のネタバレ
ネタバレです。魔術師カルタフィルスは、ヨセフとも言い、神の息子に死ねない呪いをかけられ「彷徨えるユダヤ人」と呼ばれる男です。
自分の興味だけで行動し、周囲に害を撒き散らす怪物のような存在です。彼は「苦しみ無く」生きることが目的で、いつくるかわからない終わりまで朽ちたままは厭だ、と言う台詞から、死ねない自分の人生を疎んでいるようです。「またね?」という捨て台詞は、カルタフィルスの再登場を予感させます。
また、チセは黒妖犬を使い魔にしましたが、これは、チセが死ねば黒妖犬が死ぬという強い約束――結びです。それを承知で黒妖犬は結びを求め、チセは新しい名前、ルツを与えて2人の約束が完成しました。
「魔法使いの嫁」3巻のまとめ
前巻までは穏やかに人間らしくいられていたエリアスは、チセの危機に我を忘れて本性をさらします。人ならざる異形の恐ろしさを感じさせると共に、チセの事がそれだけエリアスにとって大きな衝撃だったという、エリアスの心を感じさせるシーンです。
また、元の主人、イザベルが死に、新たな主人を得た黒妖犬ルツも、キメラにされたイザベルに涙し、チセも愛すると語ります。
人ではないものが人に愛を知り、その身を呈するという強い愛着に読者は心打たれるでしょう。その様は、激しく一途で、身を滅ぼすような危うさも感じさせます。人と人でないもの達が交流し、傷つきながらも身を寄せ合っていく様子に、これからの彼らの幸せを願わずにいられません。
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