これまでの常識を打ち破る最新理論を詰め込んだ、濃密なサッカー漫画です。
読んでいるだけで、日本が「フットボールネーション(サッカー先進国)」となる日が少し近づいている気持ちになります。
「フットボールネーション」のあらすじ
東京の河川敷で行われている草サッカーに、1年ほど前から、1試合1万円の報酬で雇ったチームを必ず勝ちに導く「ジョーカー」と呼ばれる助っ人が現れます。ポジションを完全に読み、己の能力にリミッターをかけチームに合ったプレースタイルを徹底するジョーカーを見た、アマチーム「東京クルセイド」の監督は、その卓越したサッカーセンスに目を奪われ、ちょうど入団セレクションを行っている自分のチームに誘います。
最終テストを兼ねた練習試合に、助っ人ということで参加したジョーカー。その最終テストを受けるのは元プロの鳥海です。本気を出したジョーカーの読みとパスに最初はついていけませんでしたが、ジョーカーのサッカーを理解しコンビネーションを交わしてゴールを決めます。ジョーカーも鳥海の能力を認めました。
鳥海は見事合格しますが、ジョーカーは入団を拒否します。ジョーカーは17歳で現在は高校に通っていない、またナイフで人を刺し1年前まで少年院にいたと明かします。しかしそれでもかまわない素振りの監督ですが、ある野望をもってチーム作りをしていると言います。
それは世界基準のフィジカルとセンスを持った選手を育て、日本サッカーを強くすることでした。そしてその第一歩として並み居るプロチームを倒し天皇杯を優勝すると宣言します。
ここからジョーカーを中心に、日本サッカーを変える物語がスタートします。東京クルセイドはどのようなチームへと進化していくのか、また、ジョーカーと呼ばれる少年の正体とは?気になることが満載です。
「フットボールネーション」のネタバレ
主人公・ジョーカーこと沖千尋は、海外でサッカーをするための資金を稼ぎながら、ネカフェで暮らしています。やはり生活環境はかなり特殊です。
昔横浜ユナイテッドのジュニアユースにいて、いまや日本代表候補にもなっているJリーガー・一ノ瀬迅とずっと一緒にサッカーをしていたエリートでした。才能が周りに理解されずにユースに上がることができなかった千尋ですが、迅だけが千尋のサッカーについていける唯一のパートナーであり、また良き友達でもあったようです。
少年院に入ることになった事件は、からんできたチンピラをナイフで刺したものでしたが、相手がナイフを持ち出した末の正当防衛であり、しかも実は、その当事者は迅だったのです。一つは迅の将来を考えて、もう一つは親から束縛されてサッカーができない自分を解放すべくわざと少年院に入るため、身代わりとなったのでした。
「サッカーのためならなんだってする」という千尋の言葉が胸に突き刺さります。また、その後は会っていない二人の間には、それぞれ複雑な感情が隠されているようです。
「フットボールネーション」の展開
東京クルセイドの練習に参加した千尋は、監督の奇抜ながら理論的な練習方法に少なからず刺激を受け、入団を決めました。謎が多い監督は、海外でプレーしていたプロ選手で、トレーニング方法など日本サッカーの常識を否定し自らの理論に基づいてチームを作り上げていて、それが実を結び始めています。
千尋と鳥海の加入で順調にチーム力を上げる東京クルセイドですが、天皇杯の地区予選にはまだ千尋に年齢制限がかかるため、本戦までは千尋抜きで戦うことになります。チームは千尋と一緒に公式戦を戦うため、絶対に勝ち進むと意気を高めます。
しかし、千尋と監督はこのチームに欠けている、絶対不可欠な要素が2つあると見抜いていて、それが揃わない限り天皇杯は獲れないと考えているようです。
それは一体なんなのか、また、どうやってそれを克服していくのか、先が楽しみです。
「フットボールネーション」の感想
主人公は才能にあふれ、誰もが認める実力をすでに身につけていますが、その才能を生かせない苦しみや環境の中で、懸命にサッカーを追い求める姿に感動します。まだ見せていない千尋の本気のサッカーは、どこまでのものなのか想像もできません。
また、徹底的な理論やそれぞれの人間ドラマなども濃密に描かれた、贅沢なサッカー漫画です。特に千尋と迅との関係には、ドロドロとした暗い部分が隠されていますので、今後どのような方向へ進むのか、そこからも目が離せません。
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