独特のゆるやかさと優しさで進むストーリーと、厳しい将棋の世界のリアルな描写が魅力である「3月のライオン」の2巻目です。
将棋の強さを追い求めることだけが生きる道だった零の抱えた胸の内や苦しみが、詳細になっていくと同時に周りの人々によって少しずつ溶けていきます。
「3月のライオン」2巻のあらすじ
プロ棋士となって2年目の零が、現在属しているクラスはC級1組。今期は連敗しており、上のB級2組への昇級は絶望的となりました。幼くして親を失い、将棋が強くなることで生きる道を作ってきた零にとって、プロ棋士の夢が叶ったこれからに、勝つための理由を見い出せずにいることが要因です。
なじめなかった学校生活から「逃げた」ままにしたくなく入学し直した高校でも、うまくとけ込むことができずひとりぼっちの日々です。零はそんな中途半端な自分に思い悩みながら過ごします。
このような状態から、零は立ち直っていくことができるのでしょうか。
「3月のライオン」2巻のネタバレ
そんなある日、零は川本家の次女・ひなたが想いを寄せる高橋と出会います。プロ野球選手を目指す高橋は零がプロ棋士だと知っていて、プロの先輩として零を敬い、親密になります。
ひなたの恋に協力する中、高橋が持ってきたテレビ対局のビデオによって、とうとう零がプロ棋士であるということが、ひなたと末っ子のモモにもばれてしまいます。それは二階堂が解説した零の対局でした。そこには零の投げやりな一手に対し、解説者の枠を超えた熱い檄を飛ばす二階堂の姿があり、零は心を揺さぶられます。
その様子を見て将棋に興味を持ったひはたから、将棋を教えてほしいと頼まれ、零はとまどいながらも喜びを感じます。また、手伝いを買って出た二階堂は、とてもわかりやすい教えかたでひなた達に将棋の楽しさを伝えてくれました。そんな二階堂の芯にある、将棋に注ぐ情熱とエネルギーを改めて感じる零でした。
そうして、人々と接することによりいろいろな思いに気付きながら、零は自分自身を見つめ直し、将棋に対する愛情と探求心を取り戻すことができました。そんな零のもとに、義姉・香子が訪れてきます。香子の登場とともに、物語はまた一段先へと進みます。
「3月のライオン」2巻の展開
かつて零に追い抜かれて棋士の道を閉ざされた香子は、激しい棋風と気性、そして美しさをもった女性です。自身の将棋人生と家族を壊されたと思う香子と、壊した罪悪感を持つ零との間には埋めがたい溝がありますが、お互いにそれだけではない複雑な感情を抱いているようです。
親しげに話す香子の言葉は、対局前の零を動揺させるための毒をはらんでいます。負けたら引退を考えている65歳の老棋士の話、対局のあと娘と最後のクリスマスを迎える離婚が決まった棋士の話など。しかし零はそれを受け止めながら対局を勝ち進みます。
対戦相手のこれまでの将棋人生とこれからの人生に思いをはせ、心を痛める零ですが、それでも相手を倒すため戦っていく、将棋の世界を生きていく決意がわき上がるのでした。
「3月のライオン」2巻のまとめ
人間模様と将棋棋士の描写に、ますます奥深さが出ています。また、棋戦システムなどはもとより、実際の対局棋譜を基にして描かれているので、リアルな将棋の世界を堪能できます。
将棋の強さを追い求めることと人生の幸せを追い続けること、その表裏一体の苦しみや悩みはこれからいっそう深くなると思いますが、それを乗り越えていく温かかな物語が続くでしょう。
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