マンガトレジャー

リアルなテニス漫画として、テニス関係者からも厚く支持されている作品です。現実に基づいた技術論と魅力的なキャラクターの躍動が、絶妙なバランスをもってテニスの世界が描かれています。

テニスをしたことがない人も、この「ベイビーステップ」を読めばテニスの奥深さを味わうことができるのではないでしょうか。

ベイビーステップのあらすじ

丸尾栄一郎は入学したての高校１年生。皆からは「エーちゃん」と呼ばれている、成績は子供の頃からずっとオールAの優等生です。

何事も完璧を求めて計画を立てる几帳面な性格で、栄一郎がとる緻密なノートは参考書よりもわかりやすい「エーちゃんノート」として知られています。そのノートがきっかけで、学年のアイドル・鷹崎奈津と知り合うことになりました。

運動不足解消という地味な目的のため、テニスクラブを見学に行く栄一郎は、そこで真剣にテニスをする奈津を目にします。テニスプロを目指していると明かす奈津によって、栄一郎は自分を振り返りながらテニスに興味を持つことになります。

テニスを始めた栄一郎は何冊ものテニスノートを作り、持ち前の几帳面さで地道に練習を重ねていきます。飽きることなく何時間も壁打ちをしながら、完璧なショットを体に染み込ませています。

そんな、少しずつ確実に上達していく栄一郎の姿に、奈津は大きな可能性を感じるのでした。

今後の展開

ここからネタバレです。栄一郎が練習を続ける中、ふとしたいざこざから、同じテニスクラブに所属する実力者・江川逞のサーブを受けることになり、50球のうち1球でも返せたら栄一郎の勝ちという対決が始まります。

全国トップクラスのサーブを持つ逞のサーブになすすべない栄一郎でしたが、合間にノートを見ながら動きを分析し修正することで、ラケットに当て始めます。しかしなかなか前に返せない栄一郎に奈津がアドバイスを送りました。

「ボールは追い返すんじゃなくて、迎える」

栄一郎は分からないながらもこのアドバイスの動きを試みますが、サーブは顔に直撃します。しかし、起き上がった栄一郎は何かをつかんだようで、笑みを浮かべラケットを構えるのです。

果たして、栄一郎はサーブを打ち返すことができるのか、続きがとても気になります。

「ベイビーステップ」の感想

テニスどころかスポーツ経験のない、ゼロの状態からどんどん成長していく栄一郎の姿に引き込まれ、時間を忘れて読めてしまいます。作者自身もテニス経験があるようで、それが無理のない展開やリアルな設定描写を生み出しているのでしょう。

栄一郎の武器は、緻密な分析とそれをひたすらに実践する几帳面さですが、完璧にできるようになるまで繰り返し練習できる性格は訓練で身につくものではなく、とてつもない才能です。この作品を読んでいると、ひとつのことにコツコツと地道に取り組むことの大切さを、改めて思い知らされます。

そしてまた、栄一郎の周りにいるキャラクターたちが魅力にあふれていて、作品を明るくしています。成長とともに新たな仲間やライバルとの出会いもあると思うので、これから先を読むのが楽しみです。