「明治緋色綺譚」に続く、新章「明治メランコリア」。
甘く切ない恋心は、忘れかけていた何かを思い出させてくれるかもしれません。
あなたは少女時代、どんな恋をしていたでしょう。
「明治メランコリア」1巻のあらすじ
時は明治。
呉服屋の長男藤島津軽が、廓から鈴子を身請けして5年が過ぎました。15歳になり、美しい少女となった鈴子は女学校へ通っています。津軽への恋心は、藤島の両親、津軽の親友河内がやきもきするほど進展することなく、いたずらに時は過ぎていきます。
そんなある日、藤島の両親が、津軽と鈴子それぞれにお見合いの話を持ち掛けます。
戸惑う鈴子、そして気持ちの読めない津軽。鈴子の想いは津軽に届くのでしょうか。
「明治メランコリア」1巻のネタバレ
藤島の両親は、身請け後鈴子の面倒を見てきて、鈴子をたいそう気に入っています。鈴子の想いも判ったうえで手渡したそれぞれのお見合い写真には、お互いの写真を入れておくという、手の込みよう。
5年間、ただひたすら津軽だけを想い、胸にしまい込んできた気持ちを、遂に鈴子は津軽にぶつけます。
戸惑う津軽に、親友の河内は、とりあえず付き合うことを勧めます。鈴子の兄、春時が神戸から帰るまで、という限定です。恋人になる前のお試し期間に、鈴子を一人の女としてみられるかどうか、といったところです。
級友の清子に、英文の添削を頼まれた鈴子。内容は、英語教師ディクソン先生への恋文でした。恋心というものを目の当たりにした鈴子。しかし、清子は親の決めた縁談によって別の男性の元へと嫁ぐことが決まります。
恋文を渡すことも、恋心を伝えることもしなかった清子。しかし清子は、自分が恋をしていた証が欲しかったのです。それを誰かに見届けてほしかった。その気持ちを聞いた鈴子は、恋というものの深さを知ります。
一方、鈴子の知らない面が多くなる津軽。年齢を重ねれば次第に津軽に近づいていけると思っていた鈴子にとっては不安でしかありません。
ある日、ビアホールで見知らぬ外国人男性と会っていた津軽。部屋には外国語の手紙。津軽は一体何をしているのか・・・?
津軽と連れ立って出かけた日、町に曲馬団がきていました。
そしてその中には、幼いころに仲良くなった叶の姿が。ずっと鈴子を想い続けていた叶は、鈴子に結婚を申し込み津軽に宣戦布告するのです。
そして、叶から見知らぬ包みを預けられます。その帰り道、津軽の家の前に、あの見知らぬ外国人男性の姿が。家に入るわけでもなく立ち去っていく姿に、鈴子は嫌な予感がするのです。
津軽の力になりたい、何か津軽のためにできることを・・・そう津軽に訴えます。津軽は、そんな鈴子に「枷(かせ)」と称して、初めての口づけを交わします。枷の意味するものとは・・・?
嵐でも来そうな天候の中、呉服店に軍人が訪れます。津軽に露西亜密偵の疑いがかかっているとのこと。
二人の運命はどうなってしまうのでしょう。
感想
大人の女性への一歩を踏み出した鈴子の、純粋で真っすぐな気持ちは、胸を熱くしますね。こんなにも恋とは素敵なものだったのかと、改めて思い知らされます。
確かに一回りも下で、子供だとばかり思っていた鈴子を、津軽は急に女性としては見られないでしょう。
でも、自分の中で動いていく心に、津軽は目を背けてばかりいられなくなったようですね。幼い鈴子を、「助手」として妹のように可愛がってきた思いは、いつしか二人の間で変化していく。
その過程が切なく伝わってきます。
一方で叶の一途な恋心も、直球で胸を打ちます。若者ゆえの、まっすぐな恋。遠く離れた時間も、叶にとっては鈴子を想う大切な時間だったのですね。まっすぐ自分に向けられる青い瞳に、鈴子も正面から向き合うのでしょう。
好きな相手に好きだと告げる勇気、そして清子のように告げない勇気、どちらも素敵です。
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