小学校という、様々な児童が集まる場所では、色々な理由で体調を崩してしまう生徒が出てきます。
この「放課後カルテ」は、校医として児童を見守る牧野と、様々な原因で心や体に異変を負ってしまった生徒や父兄達のドラマを描いています。
ぶっきらぼうながらも、児童や周囲の人間を真摯に見つめ、異常を見逃さない牧野と子供達のやりとりは、色々と考えさせられ、時には読者を優しい気持ちにさせてくれます。
漫画「放課後カルテ」1巻のあらすじ
産休の前任に変り、新しく学校医として着任した牧野は、ボサボサ頭で不審者のような若い男の医者でした。
牧野は保健室に来るなり、ベッドで寝ていた常連の五年生の女生徒、野崎ゆきを許可なく勝手に寝るなと追い出します。野崎は毎日倒れそうな眠気のため保健室に通い、周囲の人間にはよく居眠りをする、やる気のないサボり癖のある人間だと思われて、ゆきは周りから孤立してしまっています。
しかしゆきは、知らない間に眠っている自分をどうすることもできず、人知れず思い悩んでいたのです。
ゆきの担任は、牧野に保健室に来た時は寝かせないように指導するよう依頼します。前任が甘く、ゆきに保健室でサボる癖がついてしまったと担任は思っているのです。その時、ゆきが倒れたとの連絡が保健室に入ります。
慌てて担任と牧野は現場に駆けつけ、そこでゆきが倒れたのは、前にも何度かあると牧野は知るのでした。
漫画「放課後カルテ」1巻のネタバレ
ネタバレです。運ばれた保健室で、ゆきは牧野に普通に出来ない自分の悩みを打ち明け、周りを困らせてもどうしても寝てしまう自分に、私なんてもうどこにもいないほうがいいと泣き出します。
牧野はそのゆきの発言をバカすぎると切って捨て、病状を詳しく聞きます。そこで、よく金縛りにあい、倒れた時声が出なかったという症状を聞いて、後ほど説明をするとゆきをいったん教室に帰します。
保健室から戻ったゆきは、仮病だと噂され、陰口を叩かれている事をチクったのではないかなど、言いたい放題言われて、思わず違うと叫んでしまいます。それを周りに聞きとがめられ、非難されたゆきは、自分の気持ちなんか誰にもわからないと泣きながら、倒れてしまいます。
駆けつけた牧野は、ゆきがナルコレプシーという過眠症だと診断します。ナルコレプシーは脳疾患の一種で、日中突然激しい眠気に襲われそのまま眠り込む病気です。金縛りも倒れた時声が出ないのも、感情の高ぶりによって倒れてしまうのも、ナルコレプシーに起こる脱力発作のひとつであり、それをきいたゆきは、治れば私は変われるのかと泣き、牧野はいままでよりもお前自身は変われると言います。
友達や担任はゆきに謝り、皆が一緒だ、絶対に治そうねという言葉にゆきは決意のある表情を見せます。ゆきはまた友達と遊べるようになり、周囲の理解も得られるようになってきました。
牧野先生は怖くないかと聞かれたゆきは「私を初めて見つけてくれた先生だよ」と笑顔で話すのでした。
漫画「放課後カルテ」1巻の感想
小学校などは、前よりも病気や体質に理解を示すようになってきたという話も聞きますが、この校医牧野のようにきちんと生徒を見つめ、体調を理解してくれる者が生徒を見守ってくれるような事はまだまだ少ないでしょう。
牧野はナルコレプシーのゆきの他、マダニに噛まれ炎症をおこした生徒や、過食嘔吐の生徒、顔面神経麻痺にかかった生徒の母親、母に虐待を受けていた生徒を見つけ、適切な処置とアドバイスをみせています。
牧野が以前勤めていたのは大学付属病院のようで、そこを辞してなぜ産休代理として短期の校医になったのかなど、色々と訳ありな気配もありますが、彼は愛想のない態度の裏でしっかりと周囲に目を配り、いち早く異変に気づく事の出来る有能な校医です。
小学校を舞台に、牧野と彼を取り巻く人間が起こす極上のヒューマンドラマは、一見の価値ありです。
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