年下のお嬢様に身分違いの恋をする高校生空太は、自分の叶わぬ思いを知りながら、どうしてもその気持ちを捨てきれません。
無邪気で可愛い主家の娘、杏奈という檻に囚われたまま、空太は杏奈の側に居続けます。
切なく一途な空太の思いが叶う日はくるのでしょうか?
「彼女はまだ恋を知らない」1巻のあらすじ
高校生の空太は、六歳の時に両親を亡くし、清和家で働く祖父母の元に引き取られました。そこで空太は、清和家のお嬢様、杏奈と出会います。杏奈は、かけおちした母、杏子が病に侵されて男に捨てられ、二人で清和家に戻ってきていたのです。
杏子は程なく亡くなり、母の死を理解出来なかった杏奈は空太に母とは二度と会えないと教えてもらい、杏奈は大泣きして、焦った空太は秘密基地を杏奈に教えます。そこで、二人は約束を交わします。
「杏奈がさみしいときはぼくがそばにいる」
十七と十四まで仲良く育った空太と杏奈ですが、清和家当主の杏奈の祖父の、願いは、孫娘の杏奈が元気に成長する事。そして、杏奈が信頼のおける良家の子息と結婚し、清和家を継ぐこと。
この願いを、空太は知っています。
そして、杏奈の十五の誕生パーティーに、杏奈の婚約者候補も来るという噂が広まります。来たるべき誕生パーティーの日、空太は、ドレスアップして皆の注目を集める杏奈を、遠い存在だと感じます。
世界で一番君を愛しているのは僕だ。そう思いながら、空太は杏奈を抱きしめます。口づけようとした瞬間、杏奈が熱を出している事に空太は気がつきます。熱がひいた杏奈は、抱きしめられたこともキスされそうになったことも覚えていません。
結局婚約者も来ず、二人にはいつもの日々が戻ります。
女らしく成長していく杏奈ですが、空太は自分の思いを打ち明ける時が来るのでしょうか――?
「彼女はまだ恋を知らない」1巻のネタバレ
ネタバレです。突然の客が清和家にやってきます。その人物は、東條寺龍也。東條グループ総帥の三番目の息子で、杏奈の婚約者でした。空太と釣りにいく約束をしていた杏奈の話を聞き、龍也は次の休みに海釣りに行こうと誘います。「空太くんもぜひ一緒に」そう提案する龍也に、空太は驚きます。
龍也が婚約者だとはまだ知らず、無邪気に喜ぶ杏奈でしたが、事情を知っている空太は喜べません。眠れないまま、邸内を歩いていると、龍也が複数の女と電話をしているところを見てしまいます。
杏奈の婚約者にも関わらず不誠実な龍也を空太はなじりますが、杏奈の母、杏子の婚約者は、東條寺グループ現総帥である龍也の父の弟であり東條寺家との縁組みは清和家の悲願だと龍也は動じません。
政略結婚に誠実さなんかなくてもいいという龍也は、空太に愛人として側にいることはできるとささやきます。
そして釣りに行った三人ですが、そこで空太は龍也を認めないと言い、杏奈に相応しい誠実な人が現われるまで杏奈は俺が守ります、と言い切ります。
それを冷めた目で聞いた龍也は、杏奈を見ながらふと、君は大人になったら俺と結婚するんだよ、と口走ってしまいます。対する杏奈の反応は「へー、そうなんだ」という淡々としたものでした。
拍子抜けした龍也は、杏奈から身を翻します。その時、杏奈は海から転落し、溺れかけた杏奈が助けを求めたのは目の前の龍也ではなく、空太でした。
かけつけた空太に、杏奈は必ず空太が助けてくれると思ったと泣きながら抱きつきます。
別れ際、龍也は空太に、お姫様を奪われた騎士がどんな表情するのか見たくなったから、次は本気で杏奈をオトすと宣言します。
そして杏奈は、龍也と結婚するということに、婚約者がいると思っていたから、やっぱりか、と無表情に受け入れるような発言をします。母と同じ轍は踏ませないという祖父の願いを知っている杏奈も、家という檻に囚われているのです。
「彼女はまだ恋を知らない」1巻の感想
身分違いの恋を、男性の空太の視点から描いたこの作品は、相手の杏奈が無自覚で恋愛感情が読めないこともあって、展開に予想がつきません。
また空太が清和家の居候で未成年であり、状況に抗う術をもたないので、今は現状に翻弄されるばかりに見えてしまいます。
しかし、まだ恋もよくわからないような幼い二人の淡い交流と一途な空太の思いは、きゅんとくるような初々しさに満ちあふれています。
杏奈の母親の失敗で、身分違いの恋に否定的な周囲ですが、今後空太の成長により変わってくるのか、それとも否定をされて母親のように駆け落ちに向かってしまうのか?
今巻ラストで空太と杏奈を離れさせようとする執事の策で、空太は清和家バックアップの元留学をさせられそうになりますが、空太はどのような選択をするのでしょうか?
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