飄々と町をぶらつく男。騒ぎが起こり、どうやら財布を掏られたとのこと。スリを働いた男の逃げ足は速く、風のように去ってしまいました。
ならず者が集まる宿場では、様々なドラマが起きているようです。先ほどのスリもまた、裏の仕事で生きる一人の人間だったのです。危ない橋を渡りながら生きる男たち、その陰に隠れた女たちの物語です。
「ふたがしら」1巻のあらすじ
町で起きた騒ぎ。一人の男が何かをしでかした男を殴りつけ、悪さをしたらしい男たちが去っていきます。それを見ていた一組の男女。身なりの小綺麗なふたりは、落ち着いた様子でその場を立ち去りました。物騒な町の、いつものひとコマに過ぎません。
先ほど、殴りつけていた男。酒場で酒をあおり、でかいことがしたいと言います。男が言うには「宿場の悪党退治」。しかし、この男自体がスリなのでした。
怪我を負わせ、そのうえ財布を掏ったこの男は、相手方の仲間に囲まれ、スリの元締めの元に連れていかれます。菊之助と名乗ったこの男は、スリの財布を掏ったのでした。
しかし、その技術を買った元締めは、菊之助を仲間に引き入れようとするのです。
「ふたがしら」1巻のネタバレ
菊之助の乱闘を町で見ていた一組の男女。女のほうは、スリの元締めの娘・お鶴といいます。お鶴は、知り合ったばかりの連れ・三郎の存在が気になって仕方がありません。
後日町で再び再開したお鶴と三郎。お鶴の住む屋敷に菊之助が捕らわれていることを聞いた三郎は、三郎は、妹が菊之助に騙され死んでいったことをお鶴に話します。
敵討ちの本懐を遂げるため、手伝ってほしいとお鶴に頼むのでした。お鶴は言われた通り、牢の鍵を開けます。
しかし、それはすべて、菊之助を助け出すための芝居だったのです。三郎に恋をしていたお鶴の想いは、儚くも打ち砕かれてしまいました。
菊之助は、本当の名前を弁蔵といい、三郎は宗次という名でした。全てにおいて裏切られた思いのお鶴。
弁蔵と宗次は、屋敷を抜け、スリ集団・赤目の一味に身を寄せることも拒絶するのでした。
赤目の一味は、その後お頭が死去し、跡目争いが始まります。お頭の遺言と、残された一味各々の思いは、微妙なズレがあったのです。
そして、彼岸花の咲く道を、弁蔵と宗次はふたり旅立つのでした。
感想
ひょうひょうとした二人の物語ですね。スリという犯罪者に違いは無いのですが、時代背景がその重さを軽くしてくれている感じですね。
心に残ったのは、お鶴。恋をすると、どうしてあんなにも相手を疑わずに行動してしまうのか。
きっと、後々思い起こせばおかしなことばかりなのに、それでも慕う相手が目の前で発する言葉はお鶴にとっては全てが真実だったのでしょうね。信じることを疑わない、疑うことすら頭にない恋心は、踏みにじられてしまいました。
弁蔵も宗次も、意思がないようでいて確固たる意志をもち、お互いを信じていないようで疑わない。不思議だけれどとても気持ちのいい人間関係だと思います。
人と人との繋がりは、心の繋がりなんだと思わせる、そんな物語です。
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