産科医とは、ただ子供を取り上げるだけのものではありません。産む母親にも様々な背景があり、産まれてくる子供にも、色々な事情があります。
ピアニストでもある産科医、鴻鳥《こうのとり》サクラは、児童養護施設で育った過去を持つ青年。
彼は生まれてきた赤ちゃんがどんな事情を背負っていても、人一倍幸せになるようにと祈りながら、産科医の仕事に向き合い続けるのです。
漫画「コウノドリ」1巻のあらすじ
ピアニスト『ベイビー』は、わかっているのは児童養護施設で育ったことだけという、年齢経歴不明な謎のピアニスト。その正体は、鴻鳥サクラという産科医です。
そのサクラの勤務する総合病院に、ひとりの妊婦が運び込まれました。彼女は、妊娠しているにもかかわらず、妊婦健診を受けていない妊婦でした。
そのような妊婦は野良妊婦と呼ばれ、胎児の状態や母体の感染症などの情報がないため受け入れリスクが大きく、病院に拒否されてたらい回しにされる事が多い危険な患者なのです。
案の定、他の産科医は、他の患者の赤ちゃんに影響が出ることを怖れ、拒否しようとしますが、サクラは赤ちゃんの事を考えて受け入れを決めます。
無事出産は終わりましたが、母親は浮かない顔をしています。彼女は、相手の男と連絡もとれなくなり、両親に頼ることも出来なく、借金があり金銭的にも不自由している状態だったのです。
母親の矢野は、お金が払えないため赤ちゃんを置いて逃げようとしますが、サクラに見つかります。
保険料も払っていなかった矢野は、役所などの公的機関にも相談出来ず、出産時の公的補助の事も知らなかったのです。無知を痛感しながら、こんこんとサクラに諭された矢野は、男に逃げられ、堕ろす金もなく生んで育てる自信もない自分の理由を怒鳴り返します。
サクラは、矢野の気持ちはわからないとしながら「産まれようとしている赤ちゃんがいれば、僕らは全力で助けます」と言います。
矢野は泣きながらも、赤ちゃんは育てられないと、子供は乳児院に預けられる事になりました。サクラは赤ちゃんに自分の弾いたピアノを聞かせながら言います。
「きっとキミにはこれから人の何倍……何十倍も辛いことがあるかもしれない」
「……でも人一倍幸せになることはできる」
無垢に笑う赤ちゃんに、サクラは泣きそうな顔で「負けるなよ」とエールを送るのでした。
漫画「コウノドリ」1巻のネタバレ
ネタバレです。切迫流産した妊婦は、結婚十年目にしてやっと妊娠したのですが、21週で破水したため、赤ちゃんの救命率が非常に低い状態です。胎内にまだ羊水が残っているため、入院して24週まで安静にし、赤ちゃんが助かる確率をあげるのですが、妊娠継続には様々なリスクが伴います。
そして24週で出産したとしても、赤ちゃんに脳性麻痺や呼吸不全など、多くの合併症が起こる可能性が高いです。これを踏まえて、夫婦は赤ちゃんを助けるか助けないか、決断を迫られることになりました。
二人が悩んで出した答えは、妊娠の延長の希望。夫婦は赤ちゃんを助けると決めたのです。
しかし、妊娠延長に手を尽くしたものの、23週で陣痛が始まってしまいました。帝王切開の必要がありますが、サクラは超早期で赤ちゃんを産むリスクと今後の妊娠の可能性を考えて、するべきではないと思います。
赤ちゃんの生存の可能性が低いことを夫婦に伝え、帝王切開は次の妊娠出産にリスクが高くなる事を説明しますが、妻は後悔したくないと、帝王切開を選択します。
産まれた赤ちゃんは、500gに満たない超未熟児でした。しかし、生きて動く赤ちゃんを見て、赤ちゃんの生きる力を信じてあげてくださいとのサクラの言葉を思い出し、夫は涙を流します。
漫画「コウノドリ」1巻の感想
産婦人科を舞台にした「コウノドリ」は、テレビドラマ化もした作品です。
出産には色々な出来事があります。子供が産まれる喜びだけでなく、望まない妊娠出産や、出産にまつわるトラブルなど……。全ての赤ちゃんが愛されて元気に産まれてくるわけではないのです。
優しい話ばかりではない産科医の仕事ですが、サクラは、赤ちゃんに対する愛のある目で、それらを見つめ、患者の話を聞き、子供を取り上げます。
児童養護施設生まれの彼が望むことは、赤ちゃんが幸せになること。自分の過去も重ね合わせながら、彼は辛い背景がある赤ちゃんほど、幸せになるよう祈ります。
産婦人科が身近ではない方も、読めば妊娠出産に対して、今までとは違う視点が持てるかも知れません。命と出産について考えさせられる良作です。
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