借金で転がり落ちた先、青年は東京で黒い仕事に手を染めていきます。
アンダーグラウンドな雰囲気が満ちる「東京闇虫」は、借金まみれのやる気のない男が裏社会で生きのびていく様子を描いています。
謎の男浅村に言われるまま、得たいの知れない仕事を請け負っていく加藤は、借金を返済し、東京の闇の中で生き残ることができるのでしょうか?
「東京闇虫」1巻のあらすじ
世の中不公平だ、と考える加藤亮は、285万の借金を背負い取り立て屋に追われる日々。ある日、取り立て屋に拉致されて、どこだかわからない密室に連れてこられます。
そこに居たのは長髪の怪しげな一人の男。
男は、加藤に紹介したい仕事があるといい、仕事をためらう加藤に、人は金がなけりゃ変わるチャンスさえつかめない、チャンスはここにある、と甘い言葉をささやきます。
加藤は内心、ヤバイ仕事を押しつけられるだろうと、断わるつもりでいましたが、ここから無事で帰れるのか、この場で殺されてもおかしくないという不安からはっきり断れずにいました。
とりあえず引き受け、ここを出てから逃げようと決めた加藤は、一旦は仕事を引き受けるそぶりをします。
男は早速加藤に仕事をさせようとします。密室から出た先は、東京のネットカフェでした。加藤はネットカフェの中の部屋にいたのです。
男が依頼してきた仕事は、紙袋を指定された男に渡すだけというものでした。中身にヤバイ物があるだろうと思いながら、加藤は指示された場所に赴きます。
逃げようと思う加藤は、いきなり相手の男を見つけてしまいました。紙袋を渡した加藤は、ただ渡しただけだと自分に言い訳をします。
仕事の完了を男に伝えると、男はあっさり十万円を加藤に払いました。十万円を見て顔を強ばらせる加藤に、男はネットカフェの中の部屋に案内すると、今日からこの隣の部屋で寝泊まりしてもらうと言い、自分は浅村だと名乗ります。
報酬額の50%を加藤の取り分だとし、残りは返済に回る。借金を全額返済した時点で自由の身になれる。そう提示した浅村の言葉に加藤は揺れますが、仕事内容の確認をした加藤は凍り付きました。
闇金、偽造、ドラッグ、詐欺、裏カジノ……。浅村の言う仕事はどれもマトモでないものばかりです。ためらう加藤に、浅村は次の指示を出します。
「東京闇虫」1巻のネタバレ
ネタバレです。金融業者からの依頼は、返済期限を過ぎても連絡すらして来ない債務者からの委託回収業務でした。利子だけでも取り付けろという浅村の指示に、加藤はターゲットの田中のところに向かいます。
違法すぎる金利と、自分と似た状況という田中に、加藤は気が進みませんが、田中と話をしても足下をみられてとりつく島がありません。あおられて、思わず扉を殴りつけそうになりますが、浅村が、見本を見せると言います。
自己破産者の田中は、違法な金利を承知で金を借りていました。それを理解している浅村は、下手に出つつ、はじめから金利を提示しているので、納得ずくで借りた田中に「借りたら返す」という世の中の道理を説き始めます。これに田中は崩され、金もなく仕事もないことを嘆き始めます。
そこに、浅村は仕事がないなら美味しい仕事も紹介してやると言い、田中は泣きながら浅村にすがりつきます。加藤は田中の様子に驚愕し、見ていることしかできません。
加藤は浅村と話し、闇金は自己破産した者は二度と自己破産出来ないのでカモだと教えます。
加藤は浅村を見ながら、田中を懐柔した手腕の鮮やかさに、浅村に魅せられたことを自覚します。せめて借金が返し終わるまではこの人を見てたい、そう思ってしまった加藤の気持ちは、破滅への第一歩か、成功への足がかりか――。
「東京闇虫」1巻の感想
映画化もした「東京闇虫」は、最初はためらいながらも闇の世界に染まっていってしまう男、加藤の転落ストーリーです。
借金取りに拉致されたあと、裏稼業に手を染める男、浅村に会ったことで、彼の生き方は激変します。
怠惰な生活を送っていた加藤でしたが、浅村に会って加藤は少しづつ能動的に動き、生きる強さを見せるようになっていきます。
一般的に見れば不幸ですが、最後のシーンの加藤はアンダーグラウンドに入りこむ前よりも表情が生き生きしていて、善悪を考慮しなければ一人の男の成長ストーリーともいえます。
加藤が最後にたどり着くのは破滅か解放か、はたまた闇に染まりきってしまうのか。これからの彼の生き様から目が離せません。
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