毎週金曜日の五時間目は、戦争の時間になる――。
穏やかな田舎の離島の中学三年生達は、五年前から始められた戦争に出征することになります。
実感のなかった戦争を、肌で感じるようになっていく毎日。彼らはこの戦争を生き残ることができるのでしょうか?
「五時間目の戦争」1巻のあらすじ
中学三年生の双海朔《ふたみさく》は、田舎の離島、青島に住む少年です。日本は今戦時中ですが、田舎にまで余波はあまり及んでいません。彼は、新学期にふと見た時間割表に、「戦」の時間があるのを知って、怪訝に思います。
そんな時、現われたのは東京の中学から疎開してきた篠川零名でした。彼女は田舎が嫌いだと転校の挨拶の時にきっぱり言い切り、戦争が終わったらすぐ東京に帰ると挑戦的な眼差しをします。そのせいで、孤立してしまいますが、気にした様子もありません。朔はそんな零名が気になっていました。
そして、朔の周りの少女はもう一人。幼なじみの安居島都です。彼女は十年前の都のご飯を一生食べたいというままごとの台詞を信じて、毎日朔にご飯を作ってきています。
そのように、朔の日常は穏やかに過ぎていました。しかし、『戦時下法令第四条』なる法律により、朔たちは金曜の五時間目に戦場に出征することが決まります。
戦争の自覚がないため、生徒の反応は様々ですが、どこか呑気です。その瞬間、爆発音が鳴り響き、教室の窓ガラスは吹き飛ばされます。
爆撃を経験し、戦争の恐ろしさを知っていた零名は怯え、震えます。そして、教師が指名した生徒は、零名でした。
「五時間目の戦争」1巻のネタバレ
ネタバレです。いやだと全力で拒否する零名を見て、朔は自分が出征を引き受けようとします。しかし、教師は朔と都は、今回も今後も出征する資格はないと宣言します。
理由もわからず戸惑う二人でしたが、クラスメイトの鬼北は、彼らを無駄飯ぐらいだと言い、朔と喧嘩になりかけますが、副委員長の宮窪に制止されます。
残された生徒達はへたり込む零名に目を向け、零名と同じく疎開してきた長谷川は、零名を見ながら残酷だと言います。
「大切な人が出征して死んでいくさまを見ちゃった子がここでは一番に出征させられるなんて」
訳知り顔の長谷川を都は驚いて見つめます。
都は、爆発の怪我を友達に手当てしてもらいながら、泣き出します。謝る彼女は、朔と自分が何もしなくても助かる事を、ずるいと思い、謝罪し続けるのです。落ち込む都は、自分にできる事を考えます。私は誰かにご飯を作ってあげたいと。
朔は、島の神さま「みのかみ様」に零名の無事を祈ります。ぬいぐるみが備えられ、猫がいるのどかな神社。朔は零名の大切な人がどんな人か、ふと考えます。
そして、零名は出征していきます。零名を朔達クラスメイトは船着場で見送り、零名は朔に、似た人を知っているといいます。そして都は零名におにぎりとジュースを渡して見送ります。
その時、教室では神社にあったぬいぐるみが「最後の砦」とつぶやきます。
出征出来ない理由を知りたいと思う朔と、家庭科室でご飯を作る都。都の元に、謎のぬいぐるみが訪れ「この星では手料理というものがまだ存在するんだな」と語り出します。
また出征した零名は、本土で敵の正体を目撃しました。「知恵の輪」という敵の偵察機は、明らかに地球のものではありません。知恵の輪のようなつながった二つの輪が外れる時、生き残った者はほとんどいないという輪が外れるのを見てしまった零名でしたが、零名は生き残って戻ってきました。
夢の中で「零名をおいて俺は死なないよ」という後ろ姿の少年が零名に手を振ります。意識を取り戻した零名は都の作った豚汁を食べながら、おいしいと号泣するのでした。
「五時間目の戦争」1巻の感想
戦争と無縁な少年少女が、実感のない戦争に巻き込まれて出征していきます。得体の知れない敵と戦法は、敵が人ではない何かと言うことを徐々に見せてきていて、大変不気味です。
主人公の朔は、穏やかな田舎の離島暮らしの中で戦争を実感することもなかったのですが、これからはクラスメイトの出征によって戦争というものを肌で感じていくことになるのでしょう。彼が出征する資格がないという事も、これを助長していくと思います。
零名が戻ってもまだ戦争は続き、次の出征者も決まっています。また、この戦争を『絶滅戦争』という朔の独白もあり、戦争はこれから激化していくと考えられます。
話すぬいぐるみや、得体のしれない敵、そして出征出来ない朔と都など、明らかになっていない謎がまだまだたくさんあり、これからの展開に期待が高まります。
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