マンガトレジャー

古来の謎はどこか神秘めいて重厚さを帯びています。どこか解明するとその事の神秘性が失われる事もあるのでしょうが、何か触れてはいけない何かがあるような気がします。

古来の謎と言えば建造物にまつわる事や人物にまつわる事など多種に及びますが、神秘性をどれも含んでいます。そして最も神秘性を帯びているのは妖怪（異形の生物）は特に神秘的で触れてはいけないような気がします。

渡辺潤さんの「クダンノゴトシ」は神秘的で怖さと謎解きが融合した漫画です。

クダンノゴトシのあらすじ

辻元光は城栄大学４年の生徒です。大学４年の彼は「旅行サークル」の卒業旅行真っ最中です。伊豆へと仲間達（河合舞、白石辰巳、藤沢伸司、小野寺洋太、桜井千鶴、馬場あゆみ）と車で行き、楽しかった思い出などを話し帰路についていました。光以外は就職先が決まり新しい希望へと向かっていました。就活もままならない光へ他のメンバーも心配でした。

車は伊豆から自分達の家へと目指し走っているはずなのですがカーナビにもない道を走っていました。不安になるメンバーに対してノリで行こうと言う光に賛同する仲間達。そんな時突然何かが前に出てきてぶつかってしまいます。

驚きと恐怖で恐る恐るその物体を見るサークルの面々。そこに倒れていたのは顔は人間、体は牛というこの世の物ではない姿に彼等は恐怖にかられその物体が話している間に殴り殺すのでした。そして何事もなかったように車を走らせ元の道へと戻り帰路を急ぎます。そしてレンタカーを返す際に傷などがない事を告げられると皆夢を見ていると思います。

就職の決まらない光は恋人の千鶴に一方的に別れを告げ、絶望と共に死を選ぼうとします。意識が遠くなっていく光の前にあの物体が現れます。

重厚な謎解き

ネタバレです。突然別な道に出て異形の物体を殺してしまいます。登場人物は以下の通りです。

以上７人を中心に物語は展開します。そしてもう一人漫画の鍵を握るヤンチャ系の民俗学の先生橘秀美がいます。

この異形の物体は古来より人間の守り神として存在している顔が人間で体が牛なのです。名前は「クダン」といいます。

彼等はこのクダンを轢き殺してしまいます。その時クダンは「雨ガ　降ル　ソシテ　オ前ラハ」という言葉を残し死んでしまいます。そして彼等の過酷な運命が始まります。

全てを悲観して死を選んだ光の前に現れたクダンは「自ラノ死ハ認メナイ」という言葉と共に現れます。そして「サア始マリダ」と告げます。

初めての被害者は辰巳でした。彼は光と千鶴の仲を心配して世話を焼きますが、自身はあゆみへの気持ちを隠していたのでした。その事を光に言われると、辰巳は深刻な表情になり「7日後俺は死ぬって」、クダンが現れそう告げた事を明かす。

そして運命の日はあゆみの誕生日で彼は時計台の下で告白しようとしたその時、突然時計台が倒れ辰巳の頭を直撃します。騒然とするサークルの仲間達。呆然と立ち尽くすあゆみ。すぐに病院に運ぶも彼はクダンの予言通り死んでしまいます。

その事を受け止めきれないあゆみの前にクダンが現れます。そして体は牛で顔は辰巳でした。「馬場アユミ　オ前ノ命ハ　アト７日ダ」涙を流しながら告げます。それを呆然と聞くあゆみでした。

感想

ホラー漫画というよりサスペンス要素も強くあります。クダンとは、なぜ彼等は道を踏み外したのか、彼が狙われた理由は？　など疑問はたくさんあります。

クダンというのは昔からの妖怪で人間の守護神みたいな扱いが今回は死を告げる悪役となっています。なぜクダンがそうなってしまったのかは、後半で橘先生が解説するように彼等は禁断の行為を行ったという事が原因であります。しかしクダンの事はまだまだ深い意味がありそうです。

２番目の犠牲者あゆみは死を演出する事でこの運命を避けようとしますが、そんなことでクダンの呪いからは避けられる事もなく死をむかえてしまいます。全く打つ手がないのでしょうか。

最後に手がかりを探す為に光と千鶴は事故現場を訪れます。そこで１番目のクダンの顔は千鶴の父の顔だったという事が分かりました。ではなぜなのでしょうか？ますます謎は深まっていきます。

ここで分かることはクダンは死んではいなかった事とクダンの顔は変わるという事と死を予言する事。しかし次巻以降で救われる道が出て来るのではないのでしょうか。そしてなぜ千鶴の父の顔をしたクダンは光の元へと現れたのでしょうか。クダンはその人とより深く関係した人の前に現れるとしたら光との関係性はなにかあるのでしょうか。

今後一つ一つ解決されていくのでしょう。ダークな雰囲気の絵がより神秘的なストーリーへと色づけされていきます。じっくり話を楽しみながら今後の展開を予想してみましょう。