「ぴんとこな」とは、歌舞伎用語で男らしく芯のある二枚目のこと。歌舞伎と聞いて、華やかで重厚なイメージを連想される方は多いと思います。しかし、内実は厳しく、血筋や実力、それらの要素が積み重なってようやく花開く世界です。
この話は、歌舞伎の名門木嶋屋の御曹司、河村恭之助と、歌舞伎の家の出身ではない門閥外の澤山一弥の、歌舞伎と恋でのライバル関係を描いた作品です。
漫画「ぴんとこな」1巻のあらすじ
歌舞伎の名門、木嶋屋の御曹司の河村恭之助は、高校生にして集客力ピカイチの歌舞伎役者。しかし、本人は歌舞伎が好きではなく、舞台も適当にやるようないい加減さです。客が見ているのはブランドで、何もわかっちゃいない、と適当にやった舞台を褒めちぎる観客に、頑張っても意味がないとやる気をなくしています。
そんな折、彼は奇妙な少女に出会います。ファンサービスで出待ちを楽屋に招待するという恭之助に、楽屋ではなく来月の昼公演が見たいという彼女に、恭之助は来月は自分はいないといいます。しかし彼女は、アナタの出演はなくていいと言い切ります。
ルックスと集客力に自信のあった恭之助は、もう二度と会いたくないと思いますが、なんと彼女は同じ学校の生徒でした。
花壇の花を抜き、野菜を栽培しようとする彼女は、特待生の千葉あやめでした。貧乏でバイトばかりしているという彼女は、歌舞伎に詳しく、恭之助は舞台について辛辣な批評をされてしまいます。
「あなたの芸はそうやって逃げてる芸」
はっきり言われてしまった恭之助は、なぜだか顔を赤くします。
そんなあやめは、歌舞伎の「鏡獅子」の写真を見ながら、ヒロくん、と名前をつぶやきます。そして、全く同じ写真を意味ありげに見つめる少年。彼は何やら歌舞伎をやっているようですが、彼とあやめとの関係は――?
漫画「ぴんとこな」1巻のネタバレ
ネタバレです。恭之助が歌舞伎を適当にやるようになったのには理由がありました。師匠である父親は、恭之助が幼い頃から厳しく稽古を指導してきましたが、恭之助が頑張っても褒めるでもなく、出来て当然という態度でした。
遊びを全て断わって、稽古に打ち込む恭之助は、次の舞台で見に来る父親に褒めてほしいという願いがありました。しかし、怪我をおして必死で舞台をやりとげても、父親は褒めることなく仕事に行ってしまい「もっと精進するように」と弟子を通じて伝言があったのみ。
頑張り続けても、ほしい言葉がもらえなかった恭之助は歌舞伎が嫌になってしまいました。
そんな過去を持つ恭之助は、あやめをかばって怪我をしてしまいますが、自分にほしい言葉をちゃんとくれたあやめに思わず告白してしまいます。
しかし「ほかに好きな人がいる」と速攻で玉砕。
告白したことを、うわ言だから気にしないようにとなかったことにしようとしますが、全くあやめは気にした様子もなく、逆に気にされないことにイラつく始末。
あやめと話をする中で恭之助は自分の資質を褒められ、歌舞伎界をひっぱっていける人になれると言われます。きちんと自分を見て話をしてくれるあやめを、恭之助は自分のモノにしたいと思います。
稽古に本腰をいれはじめた恭之助ですが、稽古を見せるとあやめを自分の家に連れて行った時、恭之助の家に稽古に来ていた青年は、恭之助よりはるかに高いレベルの踊りをみせました。
彼はあやめの恋する相手、ヒロくんこと、澤山一弥だったのです。一弥は、事情を聞く恭之助に、あやめが好きだとはっきり告げます。
芸事も恋も一弥にかなわないと落ち込む恭之助。そして、一弥はあやめに会いにいけない事情がありました。もつれる恋の糸と、歌舞伎世界の因縁は、今後物語をどのように展開させていくのでしょうか――。
漫画「ぴんとこな」1巻の感想
華やかな歌舞伎世界を、ドラマチックに描いた「ぴんとこな」はTVドラマ化もした人気漫画です。敷居の高く感じる歌舞伎も、用語を交えながらかつわかりやすく読ませてくれます。
歌舞伎の名門の御曹司という特殊な世界に生まれ、一見恵まれたように見える恭之助ですが、彼は好きな女の子に振り向いてもらえない、そして父親に認めてもらえないという悩みを抱えています。
そして、元お嬢様で今は貧乏なあやめや、抜きんでた芸がありながら歌舞伎の門閥ではない一弥など、皆足りないものを持ちながら、その中で必死に生きています。
そんな恭之助達の恋はどうなっていくのでしょう。これからの彼らの恋と歌舞伎から、目が離せません。
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