裏カジノでイカサマをしようとした二村孝次郎は、逆にハメられてしまい、相棒で幼なじみの修平を人質に、ヤクザに三百万の大金を要求されて死に物狂いでお金を用意しようとします。
孝次郎は期日の五日間で三百万を用意し、修平を助けることが出来るのでしょうか?
お笑い芸人、インパルス板倉の描き下ろし小説をコミカライズした「蟻地獄」は、スリルとサスペンスに満ちて、先が全く読めません。
「蟻地獄」1巻のあらすじ
二村孝次郎は、イカサマで大金をせしめようと、幼なじみの修平と裏カジノへやってきました。データを集めることによってスロットで大勝ちした経験から、今回もたやすいとたかをくくっています。
しかし、仲間に引き込んだはずのギャンブル狂いの杉田の裏切りで、イカサマはあらかじめリークされており、用心棒に散々殴られたあげく、店のオーナーのヤクザのカシワギに三百万を要求されます。
無理なら修平の「目玉」と「内蔵」を売って金にするというカシワギの様子に、孝次郎はカシワギは三百万払わなければ何のためらいもなく修平を殺すだろうと確信します。
そして、カシワギが指定した支払期限は、五日。五日以内に三百万を持って来ないと、修平はカシワギに捌いて売られてしまいます。孝次郎は、自分が蟻地獄に落ちた蟻になったようだと感じるのでした。
「蟻地獄」1巻のネタバレ
ネタバレです。修平は、カシワギに監禁されます。そして、孝次郎は、警察に言えば孝次郎と修平と孝次郎の家族を殺さなくてはいけないと釘を刺されます。ありとあらゆる金策を考える修平は、カシワギの言っていた臓器を売って金にするという言葉をヒントに、新しい死体を見つけて、眼球を金にかえることを思いつきます。
彼は、死体が多いだろうと検討をつけた、自殺の名所「富士の樹海」に行きますが、必死に探しても死体はなかなか見つかりません。
そして孝次郎は樹海の監視員によって、樹海で見つかる死体は年間九十ほどだということを知ります。見つかる死体が四日に一人の割合では、目標に到底間に合わない、それを知った孝次郎は、自分の見通しと下調べの甘さを痛感します。
絶望して車に戻ろうとした時、そこにいたのは車上荒らしでした。バールをかまえて金目のものを要求してきた車上荒らしに、孝次郎はスタンガンを使います。車上荒らしをカシワギに差し出そうと、理性を失いかけながら孝次郎は車上荒らしを殴りつけます。
そして止めに入った車上荒らしの彼女に、孝次郎はスプーンを差し出し、こう言います。
「こいつでてめぇの目玉をくり抜け」
殆ど狂気に落ちかけている孝次郎。車上荒らし達は、孝次郎によってカシワギに売り飛ばされてしまうのでしょうか――?
「蟻地獄」1巻の感想
主人公の孝次郎は、自分が賢いと思っているクズです。
そして、孝次郎達をはめた杉田は、落とし穴に落ちた人間の悔しがった顔を見て優越感にひたるようなゲスで、カシワギは人間の臓器をためらいなく売りさばくような外道です。
登場人物はろくでもない人間ばかりですが、そんな彼らの織りなす「蟻地獄」は、先の展開の全く読めない良質のクライムサスペンスです。
そんな中で、愚鈍に見えつつも孝次郎を一途に助ける修平や、クズであっても修平を何が何でも助けようとする孝次郎の必死さは、非道な人間ばかりのこの作品の中で唯一の純粋さをもって輝いてみえます。
自分を過信して欲をかいたばかりに蟻地獄におちいった孝次郎と修平ですが、小学一年生から仲が良かったという二人のエピソードを読む限り、今まで持っていたささやかな幸せまではむしり取られてほしくないと感じます。
二人の現状は最悪ですが、孝次郎達を待ち受けるのは希望か絶望か、最後まで彼らの行く末が見逃せません。
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