落語、というものは普段馴染みがないかもしれません。お年寄りが聞くものという印象があるかもしれません。
この作品は、昭和の落語界を舞台に、落語に人生を捧げ、落語を通じて友情と夢、そして愛憎を育んでいった男達の物語です。
「昭和元禄落語心中」1巻のあらすじ
刑務所を満期で出所した青年は、刑務所落語慰問会で見た落語が忘れられず、それを演じていた有楽亭八雲に弟子入りしたいと頼み込みます。八雲は弟子をとらない主義でしたが、帰るところがない青年を与太郎と呼び、何の気紛れか家に連れ帰り弟子として面倒を見ることにします。
八雲は、与太郎を、養女の小夏にまかせます。小夏は有楽亭助六という、戦後黄金期と言われた落語会を八雲と二人で支えた若手ホープの娘ですが、助六はこれからという時に妻と二人亡くなったそうで、そのため、身寄りがなくまだ小さかった小夏を八雲が引き取ったのです。
そして、色々八雲と小夏は繊細な間柄だと、八雲の世話をしている松田は与太郎に念を押します。
そこへ現われた小夏は、八雲は弟子をとるつもりなんてないからあきらめろと与太郎に言います。八雲は弟子をとらず落語と心中する、小夏は八雲からそう聞いていたのです。しかし与太郎は気にした様子もなく、小夏にこれからよろしくと挨拶をします。
そして小夏は、父助六の落語が好きだったため、自分でもこっそり落語の稽古をしていました。しかし、女の真打ち(落語家で弟子をとれる程高位の者)はいないため、小夏は落語家になることをあきらめています。
与太郎はそれを知り、小夏も落語家を目指せば良いと励ましますが、小夏は八雲が許さないと言います。
与太郎は、八雲に自分に落語を教えてくれるように頼みます。そして、小夏の弟子入りもお願いします。驚愕する小夏でしたが、与太郎は小夏の書いた落語のノートを八雲に見せ、小夏の努力を知ってもらおうとします。
それを見た八雲は「全部あの人のネタ」だと言い、小夏は好きで何が悪いと返しますが、何が逆鱗にさわったのか八雲は小夏にノートを投げつけます。
小夏は八雲につかみかかろうとし、止める与太郎の腕の中で、「有楽亭助六はお前が殺したんだ」と叫ぶのでした。
「昭和元禄落語心中」1巻のネタバレ
ネタバレです。与太郎は松田に八雲と助六の過去を聞きますが、松田は助六の死は事故だったと言います。
八雲と助六は、昔の芸名は菊比古と初太郎といい、同日に入門した同い年で、とても仲の良い二人でした。なぜ助六が死んだのか、小夏は本当の事が知りたいと願っています。
八雲は小夏に、助六を殺したと思っているならそれでいい、半分そんなようなものだと言い、自分を殺しても自由だとまで言いますが、小夏が噺家になるなら全身全霊で阻止するときつく念を押します。
女が噺家になるのは不可能だ、神さまは小夏をなんで男に生まれさせてくれなかったのかという八雲は、自分がいっそ女に生まれていればこんなに楽な事はなかったと謎かけのような言葉を小夏に投げかけます。
助六は今でも自分の中で生きている。そう言った八雲の真意は――?
「昭和元禄落語心中」1巻の感想
落語と聞いて、難しそう、取っつきづらいなどのイメージがある方もいるかもしれませんが、このアニメ化もした「昭和元禄落語心中」は落語を軸においた人間ドラマであり、折り紙付きの面白さです。
八雲と助六、彼らの世代を超えて引継がれる愛憎は、まだまだ謎多きものですが、それを知る八雲は自分の中に秘めてけして誰にも話そうとはしません。少々ブロマンス的な雰囲気も漂いますが、男社会である落語界の才能への愛着も男惚れのように現されているところがあり、それが作品の色気やアクセントにもなっています。
最後に現われた助六の幽霊は、八雲の幻覚か本物か? 謎が紐解かれていく事を楽しみに、次の展開も期待したいと思います。
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