本を売るためには、それを描く作者だけでなく、編集者や出版社の営業、書店員といった色々な人々の力があります。
この「重版出来!」は、体育会系新人漫画編集者の黒沢心の奮闘を通して、なかなか見ることの出来ない出版業界の裏側を垣間見ることが出来ます。
テレビドラマ化もされており、お仕事漫画として読み応えのある一冊です。
漫画「重版出来!」1巻のあらすじ
就活生、黒沢心は出版社の最終面接に挑みます。彼女は、体育大学の柔道部で活躍した体育会系の個性派。そんな彼女は面接に集まった就活生の中で異彩を放っています。
そして面接に挑む学生達を見て、面接官である和田は就活マニュアルそのままの受け答えをする学生達に食傷気味。心に質問をしますが、得意技は背負い投げ、特技は腕立て200回だという彼女を面白いと気に入ります。
しかも思い切り肉体派に見える心は、筆記が満点。彼女はとてつもなく勝負強い女だったのです。
もちろん勉強も真面目にしていた彼女は、マスコミ用語集で重版出来《じゅうはんしゅったい》という言葉を初めて目にします。
本を売り切った後、さらに刷る事を重版といい、重版が出来たことは重版出来と呼びます。それは、出版業界では重要な言葉です。
そして最終面接、柔道一筋でやってきた心はなぜ出版関係を志望したかと聞かれ、怪我で柔道はオリンピックを目指せなくなり、目標を失った中自分の人生に本が重要な役割を果たしてきたことを話します。
そして、海外遠征した時に言葉が違う国の人々が漫画のキャラクターを知っていたこと、その感動を胸に、地球上のみんなをワクワクさせるような作品を作りたいと、心は志望動機を語っていきます。
その時、掃除のおじさんがモップを振り回して面接会場に乱入してきました。とっさに投げ飛ばした心でしたが、そのおじさんは社長でした。
落ちたと確信する心に、採用の電話が入ります。社長は毎年変装して、面接に来た学生の様子を見ているのです。出版は勝負の世界。心のような人材こそ、いい働きをすると社長は断言します。
漫画雑誌「週刊バイブス」に配属になった心は重版出来の言葉を耳にして、本当に使われている事に感動するのです。
漫画「重版出来!」1巻のネタバレ
ネタバレです。心は新米編集者として、先輩の編集者についていって仕事を覚えはじめます。ベテラン漫画家三蔵山の家に行き、アシスタントと挨拶をした心は、なかなか漫画家になれないという彼に、頑張ってくださいと言葉をかけます。
しかし、頑張ってもデビュー出来ない、老害の三蔵山のような漫画家がいるから自分達若者が世に出られないと逆恨みをしているアシスタントは、心の言葉にカチンときます。
彼は、三蔵山にネームを見てもらっていますが、三蔵山に悪いところを指摘され、自分のネームがわからないのは三蔵山のセンスが古いからだと叫んでしまいます。さらにアシスタントは、皆が三蔵山をデッサン崩れしていると噂していると罵り、三蔵山の机に三蔵山に対する悪質なインターネットの書き込みを印刷したものを置いて、出奔してしまいます。
三蔵山はショックで、週刊バイブスの連載をやめると編集部に宣言します。後始末にてんやわんやの編集部ですが、心はひょんなことから三蔵山がデッサン崩れをするようになった原因をつきとめます。
年齢ゆえに、三蔵山の姿勢は前屈みになっていました。そのため、デッサンがゆがみ、平面印刷によって歪んで見えるようになってしまったのです。三蔵山の絵は復活し、おかげで重版出来です、と心は満面の笑みを浮かべます。
漫画「重版出来!」1巻の感想
お仕事漫画というのは、普段はなかなか見る事のできない業界の裏側を見ることが出来て、それも面白さのひとつになっています。
この「重版出来!」は、漫画編集部という特殊な世界で、漫画家と編集家、そして営業や書店員といった本に関わる人々が、どのようにひとつの作品をつくりあげ、それを売ってくかという様子が興味深く描かれています。
ヒロインの心は根っからの体育会系で、タフで真っ直ぐ。おまけに仕事熱心なので、重苦しくなりがちな場面も、小気味よく読みすすめていけます。
漫画が好きな方、本が好きな方、出版業界に興味がある方などに、特にオススメです。これを読めば、漫画に対する見方が、もしかしたら変わるかも知れませんよ。
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