美味しいご飯は、日々の糧であり、とても嬉しいものですが、誰かが毎日、手間暇かけてはじめて出来上がるものでもあります。
この「きのう何食べた?」は、同棲するゲイカップル、弁護士の筧史朗と美容師の矢吹賢二の、食事を中心にした日常漫画です。
全てのおかずの制作工程も描かれており、読み物として面白い上に、レシピとして献立の参考にもなるので、気になった方はぜひお試しください。
「きのう何食べた?」1巻のあらすじ
筧史朗43歳は、弁護士で恋人と同棲するゲイですが、自分がゲイだと言うことは可能な限りひた隠しにしています。また、そんな彼は家では主に買い物と料理を担当する凄腕の倹約家で料理人でもあります。
彼は今日も仕事をさっさと片付けて早く帰宅、スーパーで吟味の上、底値の食材を手に入れます。
本日の献立は、さけとごぼうとまいたけの炊き込みご飯、豚肉とかぶの味噌汁、小松菜と厚揚げの煮浸し、作り置きの大根とほたてのなます、卵とたけのこの千切りとザーサイの中華風炒めです。一汁三菜、あまいからいすっぱいのバランスをきっちりとった彼の手料理は、見事の一言。
史朗は作り上げた献立を前に、仕事をひとつ終わらせたくらいの充実感を感じます。そこに帰ってきた彼の恋人、ケンジは、スーパーで買わずにコンビニで定価のハーゲンダッツを買ってしまったため、史朗に怒られてしまいます。
弁護士なのに金に細かく、家賃十万円ぽっきりのマンションに住む史朗は、ゲイには子供に面倒を見てもらえる未来は無いからと、将来のためにお金を大事にする現実派です。
ケンジに強気の史朗の弱点は、自分の母親。ゲイだと言うことがバレてから、新興宗教に入信するなど極端な行動に走りがちな史朗の母親は、今日は「性同一障害の子供を持つ親達の会」に参加してきたと電話で報告し、ゲイと性同一障害は違うと史朗は困惑。ヒートアップする母親の電話を早々に切ります。
きっちりと家計簿をつけ、髪はケンジに切ってもらって蓄財に励む史朗は、今月の食費は予算の二万五千円より大幅に浮いたと喜びの声をあげるやりくり上手でもありました。
「きのう何食べた?」1巻のネタバレ
ネタバレです。史朗はスイカを買おうか悩みますが,二人で一玉はキツく、同じように悩む中年女性の佳代子と意気投合し、スイカを折半することになります。佳代子の家でスイカをいただくも、ふと佳代子は最近この界隈でレイプ事件が多発していることを思い出しました。目の前の史朗はアロハシャツで驚くほどのイケメン。
カタギには見えず、ホストっぽい史朗に、佳代子の疑惑は一気にふくれあがり、ティッシュをもらおうと近寄ってきた史朗に思わず叫んでしまいます。
慌てた史朗は、勢いで自分がゲイだと告白してしまいました。弁護士の名刺も見せますが、帰ってきた家族にゲイだと紹介され、想定外にカミングアウトすることになってしまいました。この後もつきあいが続くことになる佳代子は、今や史朗の献立の良き相談者でもあります。
また、ケンジは史朗と違って自分がゲイであるということを職場にもお客にも堂々とカミングアウトしています。なるべくなら隠したい史朗は、ケンジがゲイだと知るお客に、ケンジの恋人だと見抜かれてしまい、帰宅後ケンジを説教します。
しかし、なんで他の人は家族の話をするのに自分は堂々と自分の事を話せないのかと泣くケンジに、史朗はそれ以上何も言うことが出来ません。
ご飯を作り、一緒に食べるうちに仲直りする二人。色々な悩みを抱えながらも、彼らは今日も美味しいご飯を食べるのです。
「きのう何食べた?」1巻の感想
美味しいご飯は、体にも心にも栄養を与えます。料理上手でやりくり上手の史朗が作る献立は、とても美味しそうでなおかつ作りやすく、レシピ本や献立の参考としても重宝します。
また、さらりと描かれていますが、ゲイカップルである彼らは、家族や周囲とにデリケートな問題を感じながらも、パートナーとして生活をしています。
四十代という色々な事を考える年代の悩みや、衰え始める体調の心配など、リアルな描写はゲイでなくても共感出来る部分が多々あり、ただのグルメ漫画ではないこの漫画の深さを感じました。
もちろん日常グルメ漫画としても大満足な、数々の美味しい食べ物の描写に、この作者の食べ物や食事への愛を実感出来ます。これからも末長く読み続けていきたい良作です。
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