名門女子高の学内社交サークルと聞けば、優雅な印象がありますが、この作品に描かれるサークル「ソロリティ」は言わば選ばれた特権階級の集まり。厳正な審査の上選ばれたメンバーには、羨望と嫉妬がつきまといます。
ベルサイユのばらの池田理代子の描く「おにいさまへ・・・」は、そのソロリティに選ばれた平凡な少女奈々子と、魅力的で危ういソロリティメンバー達による華やかな愛憎ドラマです。
漫画「おにいさまへ・・・」1巻のあらすじ
中学3年生の御苑生奈々子は、進学教室の社会科教師、辺見武彦に「おにいさまになってください」と頼みます。こうして2人の文通が始まりました。そして奈々子は無事高校に合格、名門女子高の青蘭学園に通う事になりました。
入学初日に出会ったのは、中性的な美貌の折原薫、通称、薫の君と、生徒会長、一の宮蕗子、そして謎のハスキーボイスの上級生です。
中等部から在籍しているという友人、信夫は薫が病気で休学していて一年留年していること、選ばれた生徒だけが入れるソロリティの存在を教えてくれます。
特殊な環境に圧倒される奈々子は、自分がソロリティの目にとまるとは全く思っていません。
ある日、奈々子は初日に出会った謎の上級生が、サン・ジュストさまと呼ばれる朝霞れいだと知ります。目立つ彼女に奈々子は興味をひかれますが、れいは奈々子に会った事を覚えてない様子で、奈々子は落ち込みます。
ソロリティメンバー候補が選抜される日、選ばれたのは薫と信夫、そして奈々子でした。候補生はパーティーで正式にソロリティにふさわしいか選ばれるのです。薫は辞退し、自分が選ばれる事などゆめにも思わず動揺する奈々子ですが、周囲の反応は冷たく、奈々子はソロリティにふさわしくないと糾弾されてしまいます。
ソロリティのパーティーには行かないと泣き出した奈々子ですが、パーティーの時間が変更になったと蕗子から電話があったという母の言葉に、パーティーに参加します。しかし、その電話は別人がなりすましたもので、パーティーは時間どおりに開催され、奈々子は大幅に遅刻してしまいます。
しかし、ソロリティメンバーは奈々子をカンカンになりながら待っていると信夫から聞き、奈々子はメンバーの元へ向かいます。
漫画「おにいさまへ・・・」1巻のネタバレ
ネタバレです。奈々子は、武彦の父親が再婚した相手の連れ子でした。武彦は血のつながりがなくとも奈々子を妹だと認識しています。
そして、奈々子は遅刻したにもかかわらず、メンバーから面接を受けて、ソロリティに正式に認められました。遅刻したにもかかわらず合格した奈々子は、皆からなじられ、母が小料理屋を経営していて、そこに妻子のあった御苑生教授が来ていたという奈々子も知らなかった話を暴露されます。
泣き出す奈々子は、薫にかばわれますが、その言葉をはねつけてしまいます。しかし2人は交流を続け、仲良くなっていきます。
度重なるいじめに、奈々子は打ちひしがれ、居場所を求めて時計塔に入ります。そこで同じように辛い思いをした過去の生徒達の落書きを見て、心が慰められます。
そこで、奈々子は時計塔でれいが煙草を吸っている所を見てしまいました。奈々子の事を覚えてくれていたれいに、奈々子は感激しますが、どぎまぎしてうまく接する事が出来ず、自分の感情に戸惑います。
漫画「おにいさまへ・・・」1巻の感想
狭い世界で、ドロドロとした人間関係が錯綜する「おにいさまへ・・・」は、過去にアニメ化もされ、女子高という舞台ゆえか、根底に同性愛めいた雰囲気が漂っています。
薫やれいへの宝塚のようなファンの群がりようはもとより、奈々子の友人の信夫は、親がエロ作家という境遇ゆえか、常に孤独を抱えていたようで、奈々子にひどく執着し、奈々子の昔からの友人に嘘をついてまで奈々子を独り占めしようとします。
そして蕗子とれいは何やら因縁があるようで、蕗子はれいを故意に傷つけたあげく、奈々子とれいが何を話したか執拗に聞きたがり、れいに近づかないようにと奈々子に忠告をします。れいはそのせいか非常に退廃的で、精神安定剤や睡眠薬をいつも持ち歩いています。
傷つけながらも愛着するその様は、月並みな言葉で表すならば、ヤンデレ百合。大人になる前の少女達の愛憎が、華麗に濃密に描かれています。古き良き少女漫画を愛する人、百合好きにもオススメしたい名作です。
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