マンガトレジャー

吸血鬼がマイノリティとして人間と共存する世界。

彼ら吸血鬼はオキナガと呼ばれ、日本には推定十万人存在し、厚生労働省の管理下にある――。

この「白暮のクロニクル」はそんな世界を舞台に、人間と吸血鬼のデコボココンビが「羊殺し」と呼ばれる連続殺人鬼を調査、解明していく物語です。

表紙とタイトルからは想像がつきづらいですが、登場人物の年齢が高いせいか、どこか昭和の雰囲気も漂うミステリー漫画です。

「白暮のクロニクル」1巻のあらすじ

伏木あかりは、渋谷区保健所で研修中の26歳の女性。仕事で訪れた飲食店で殺人事件に巻き込まれ、職務を遂行出来なくなってしまい、思わず怒鳴りつけた相手は来週から戻る予定の厚生労働省の上司、竹之内でした。

焦る伏木でしたが、竹之内に急な辞令を出され、竹之内の統括する夜間衛生管理課なる部署に配属されます。

夜間衛生管理課とは、日本に推定10万人いると言われる不死者オキナガを管理、支援する部署です。伏木は、戸惑うままに夜間衛生管理課の久保園に連れられて、私設図書館の按察使文庫に向かいます。

そこで紹介されたのは、雪村魁という少年。しかし彼は88歳のオキナガだったのです。雪村は竹之内の依頼で「オキナガ案件」と呼ばれる事件を警察より先に解明する協力をしているのです。

伏木は、竹之内の連絡係となり、雪村と共に、オキナガ案件を解決する手助けをすることになります。

そして、雪村が長年追い求めるオキナガ案件は、12年に一度、未年に若い女を殺して内臓を抜き取るという「羊殺し」。

犯行が長年に渡っているため、犯人がオキナガとも言われるこの事件は、雪村にとっても個人的な思い入れがあるようだと伏木は見抜きます。

雪村と羊殺しの因縁とは？　そして雪村と伏木は、羊殺しを解明することが出来るのでしょうか？

「白暮のクロニクル」1巻のネタバレ

ネタバレです。オキナガの血を飲ませ、その血に適応すると、普通の人間もオキナガになってしまいます。また、日光に弱く、怪我の治りが異常に早く、不老不死である彼らは実質吸血鬼に等しい存在といえます。そのため、普通の人間からは化け物扱いをされたり、忌避されるような扱いを受けることも多々あります。

雪村も過去に警察に背格好が似ていたというだけの理由で殺人事件の犯人扱いをされ、苛立って警察官の手を振り払った時に公務執行妨害で逮捕。釈放されましたが、その時の経験で警察の唐沢とは決定的に関係が悪くなっています。

唐沢は、雪村を一年前のジャーナリスト一家殺人事件の犯人だと思い込み、執拗に事情聴取をしてきます。そんな中、オキナガが連続で殺される事件が起こります。現場で目撃されたのは雪村に似た黒いフードの人物。唐沢は雪村を締め上げようとしますが、犯人は唐沢の部下であり、無実のオキナガを羊殺しの犯人として誤認逮捕し、死刑台に送り込んだ刑事の娘、鳴宮でした。

鳴宮の死でオキナガ連続殺人事件は解決したかにみえましたが、鳴宮の同僚の平田の電話から、事件の黒幕らしき人物の影が見え隠れします。また、伏木の祖母もなにやら過去の因縁がありそうで、謎が謎を呼ぶ1巻、続巻の展開が待たれます。

「白暮のクロニクル」1巻の感想

この白暮のクロニクルは、タイトルと表紙だけ見ると、おそらくミステリーとは想像がつかないのではないでしょうか。私は中身を読むまでは、不老不死者の人間ドラマか現代ファンタジーだと思っていました。なので、とても損をしてるなあと感じてしまう良質のミステリー漫画です。

12年に一度起こる猟奇殺人事件、羊殺しを追う雪村と、彼ら異端の存在オキナガとそれに関わる人々、伏木達との人間ドラマも見応えがあります。人の姿をした異質の存在という悲劇性が物語を盛り上げ、今後の展開と、雪村と伏木の関係の変化がどうなっていくのか見逃せません。

また、過去の因縁や黒幕の存在など、今後解かれていくだろう謎に期待しながら、続刊を追っていきたいと思います。