法医第九研究室。死んだ人間の脳をMRIスキャナーにかけ、最新の技術で最大5年間に見たものを映像化し真理に迫る。
惨い殺人事件の被害者たちの最期の瞬間までを追求し、犯人の心情を暴くこの部署は、精神的に強くなければ勤まらない。
そんな通称第九のメンバーたちによる、強く哀しい物語です。
「秘密 トップ・シークレット」1巻のあらすじ
第57代大統領ジョン・B・リード。清廉潔白で正義感に満ち溢れ、汚点のない、誰からも尊敬されるジョン。
ホワイトハウスで執り行われた誕生会に、美しい愛娘デボラから、ひとりの男性マシューを紹介されます。いつも愛想のいいジョンが、なぜかマシューには不愛想だったことを気に掛けるデボラ。
そして2か月後、ジョンは自殺か他殺かわからない死を遂げます。
読唇術のアナリストであるケビンの元に、警察から捜査依頼がきます。脳の映像から唇の動きで状況を把握し、事件は解明されていきます。ジョンがマシューを愛していたという事実、誤解による殺人、そして、世間は法医研究というものを知るのです。
「秘密 トップ・シークレット」1巻のネタバレ
2060年、白泉宮様と粧子様のご婚礼が執り行われた日、全国で9件、少年たちの自殺が相次ぎます。この異常事態に動き出した法医第九研究室。その第九は、個人のプライバシーや倫理問題に問われていました。
第九の室長、薪剛は、一見高校生に間違われそうな幼い容姿ながら、美しく聡明な室長です。しかし、去年の28人殺しの犯人の脳を見た人間で唯一精神を病まず、自殺することもなく生き残った人間でもありました。
犯人の貝沼は留置所で自殺しましたが、その脳内映像がどんなものだったのかは、今では薪しか知る由もなかったのです。
薪の部下として働くこととなった青木は、この部署は勤まらないから辞めろと薪に言われます。麻薬漬けになった犯人、殺人鬼、強姦犯、そういう人間たちの狂った脳を見ていくには、青木は真っすぐすぎる性格だと薪は思ったのでした。
異常な人間の脳内は、常識ある人間には理解できず、しかしその異常さを理解しようとすれば狂ってしまう。精神の正常と異常の狭間で、苦しむ部署でもあったのです。
連続自殺少年たちの脳から、全員が貝沼により催眠術をかけられていたことが判明します。そして気を失った薪。
薪は3年前に万引きを犯した貝沼を見逃してあげていました。しかしその後連続殺人犯となったことで、薪は自分を責めていたのでした。貝沼の脳を見たなかのひとり、同僚の鈴木は不慮の死を遂げ、その鈴木の脳から貝沼が薪を愛していたことがわかったのでした。
死んだ鈴木への思い、自分の中の葛藤に苦しむ薪と第九のメンバーたちです。
感想
死んだ人間の見たものすべてが映像化され、他人の目にさらされるということがどういうことなのか。
いま見ているもの、何気ないことから秘密にしていることまで全てが晒されてしまったら。とても恐ろしいことで、倫理上の問題、プライバシーの問題、そして反感をもつ人間は大多数かと思います。
そんな中、それを仕事としてやり続ける第九。仲間がどんどん精神異常となり自殺していく中で、感情を殺すことによって精神維持を保つメンバーたちの姿に、強くも悲しい気持ちにさせられます。
死者の脳に取りつかれ、死の世界へと引きずり込まれる仲間を見てきて、メンバーたちはどう乗り越えてきたのか。普通の人間が普通にしていては勤まらない第九で、新人の青木がどう成長していくのか楽しみですね。
この記事へのコメントはありません。